フランチャイズ加盟相談数と日経平均株価に関連性?!
フランチャイズ業界全体の市場規模は日本フランチャイズチェーン協会が毎年秋頃に前年度の統計データを発表するため、こちらでは当社調べによる「2015年における加盟検討者の傾向」について発表することとしたい。
当社の調査結果は加盟検討者向けのアンケートによる定量的な側面と、加盟者からの相談による定量的な側面を交えながら解説する。
まず2015年の日本経済では、景気は緩やかに回復傾向であるとされるものの、2014年4月の消費税増税より個人消費は思うように伸びておらず、企業の設備投資も増えなかった1年であった。一方で原油安による貿易収支の改善や物価下落、訪日観光客による爆買いなどもプラス要素も見受けられた。
有効求人倍率は1.2を超え、過去10年の間で最高値を記録。完全失業率は3.0%を切るには至っていないが、右肩下がりで改善傾向であり、転職業界は比較的好調のようである。またFacebookやGoogleに代表されるウェブサービスの躍進により、起業がより身近になり、一部の企業が副業を認めるなど、起業が転職と同位置のキャリアアップの選択肢となりつつあることも近年の動きでは注目すべき点だ。
当社へのフランチャイズ加盟相談件数は通年で前年比86.3%という結果であったが、そのうち後半の10-12月では158.9%と大幅に増加。実際に「フランチャイズ」というキーワードの検索は、同期間で前年比114.7%である。
ちなみにフランチャイズ加盟相談件数が増加する直前である2015年9月は一時期2万円を超えていた日経平均株価が1万7千円台まで下落していた。その後2万円近くまで回復したものの、先日過去最高の来場者を記録した日経フランチャイズショーの開催直前は1万6千円台まで急落しており、関係性は定かではないが引き続きウォッチしていくべきポイントかもしれない。
さて前置きが長くなってしまったが、本題の「2015年における加盟検討者の傾向」を解説していこう。
投資商材として選ばれるフランチャイズ
相談者の属性*図1
不動産所有状況*図2
相談者の内訳として法人が1.4%増加(*図1)。また悠久物件等の不動産所有者がプラス1.9%の12.9%(*図2)であった。
相談内容は「不動産活用」、ただ賃料収入のために何でも良いわけではなく、土地柄や立地、物件特性などを分析し、業種・業態を指定する相談がほとんど。
ただし、オペレーションまで面倒を見るつもりがない、或いはできないというケースが多く、コインランドリーやコインパーキングビジネス、レンタル倉庫などの無人ビジネスを除くとニーズへのマッチが難しい。
直営店同様のクオリティー維持のために、運営を本部で受託するなど、「投資家集め」とも見られる加盟店募集方法を採っているフランチャイズ本部も存在するが、トラブル、或いは本部経営の圧迫を招いている現状もあるようだ。
資本と経営の分離と言われるように、フランチャイズ業界においても新たなスキームが出現するかもしれない。
早期退職者がフランチャイズ加盟検討者に
加盟相談者の年代*図3
開業予算*図4
開業希望時期*図5
大手メーカーを中心とした大規模な人員削減、早期退職者の増加がフランチャイズ加盟検討者増加の後押しとなっており、当社のアンケート調査にも明らかに反映していることがうかがえる。40代の加盟相談者が前年比プラス3.8%(*図3)、退職金を手にしたことによって開業予算は501-1,000万円が前年比プラス3.4%(1,001-3,000万円は1.3%増*図4)、3ヶ月以内・6ヶ月以内の開業希望は合わせてプラス2.2%(*図5)である。
しかしながら、フランチャイズ加盟における「検討の準備期間」としては状況からしても不十分であり、「何をどうやって探せばいいのか」或いは「自分に何が向いてるのか」ということが「わからない」という相談が相次いでいることも事実である。
人気業種の傾向、一段と不透明に
興味のある業種*図6
業種を指定しない、複数回答結果が全体の40.1%を占め、前年比プラス12.6%に。(*図6)
前項の通り、フランチャイズ加盟における「検討の準備期間」が不十分なため、「何をどうやって探せばいいのか」或いは「自分に何が向いてるのか」という相談が特に早期退職者には多い。転職にしろ、起業にしろいずれも「関心」が「万事の原動力」であるため、当社の突撃レポートのように末端サービスへの関心を誘発する活動がフランチャイズ業界に求められているのかもしれない。
また依然として人気の高い小売・飲食以外の「その他サービス業」であるが、介護・保育園のように国や自治体規制の影響を受けるもの、クリーニングやリペアサービスなど無店舗・無在庫型=職人型ビジネスなど、タイプが多種多様であり、その特性と自分のライフサイクルとの相性など、より研究が必要とされる。
なお、詳しくは今後リリース予定の「フランチャイズショー2016レポート」で解説するが、フードサービスへの期待は好転しつつある。外食市場全体が徐々に回復しており、震災から5年経過した今、一定の事業規模感が得られるフードサービスが再注目されているのだ。
地方に分散するフランチャイズ
加盟検討者の居住地域*図7
開業希望エリア*図8
加盟検討者の居住地域(*図7)では、北海道・東北・東海・中国・九州で約5%増加。特に東北と東海の増加が目立つ。比例して図8のように開業希望エリアも全国に分散していることがうかがえる。
フランチャイズ本部も東京・大阪に集中しており、必然的にその周辺での出店が先行するため、一部の本部では飽和状態の地域もある。
とはいえセブンーイレブン・ジャパンでさえも40年以上の歴史において、青森や高知、山陰への出店は2015年からであり、本部の物流網やサポート体制など、小さな日本でありながら容易ではないことも、2015年に改めて気付かされるニュースであった。
今後、「フランチャイズショー2016レポート」で出展者及び来場者から見える2016年のフランチャイズ業界の展望に触れていきたい。
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