数字で振り返るフランチャイズショー2017

2月1日から3日までの3日間、東京ビッグサイトにて33回目となるフランチャイズショー2017が開催された。日本経済新聞社が主催する本イベントは毎年3万人以上の来場を記録する日本最大のフランチャイズイベントである。フランチャイズショーはこれまで、「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」の名のもと、毎年3月にJAPAN SHOPやライティングフェアなど様々なイベントと同時に開催してきたのだが、今年は例年の東京ビッグサイト西ホールから東ホールへ移動し、新設された「インバウンドビジネス総合展」と共に、2月という新たな会期を迎えたのである。

例年通り3月に開催される各イベントは事前来場登録が無い場合、入場料2,000円という設定がある一方で、2月開催のフランチャイズショーは事前来場登録をせずとも無料で入場できるという違いがある。主催者の真意は定かではないが、客層や企画によって入場料が異なることを明確にするため、会期の変更に至ったのかもしれない。

フランチャイズショーはこれまで、同時開催されるイベントからの送客が手伝い、それによって近年の予定来場者数3万人を達成してきた。会期の変更は、集客という点で主催者及び出展者の最大の不安要素であったはずだが、公表された来場者数は例年通りの設定であり、同時開催のインバウンドビジネス総合展の集客を期待していたとしても、それは新規企画のため、ふたを開けるまで誰もが予測できないという状態であった。しかしながら結果は予想を大きく上回り、前年比約10%アップの36,912人を記録し、過去最高となった。

別表1

出展者の内訳

日本経済新聞社による下記の出展者カテゴリーを別表2にて当社が再編した。

日本経済新聞社による出展者カテゴリー

  • FC本部 フードサービス業
  • FC本部 フードサービス業フードコート
  • FC本部 小売業
  • FC本部 サービス業
  • FC本部以外 ビジネスパートナー募集
  • FC本部以外 フードサービス開業支援ビジネス
  • FC本部以外 フランチャイズ支援ビジネス
  • FC本部以外 コンサルティング・相談、出版
  • FC本部以外 店舗開発・立地戦略
  • 海外関連

 

別表2

一見、フードサービスの出展者が大幅に減少しているようにも見受けられるが、別表2におけるフードサービスは開業支援サービスを含めた数値であり、フード開業支援サービスを除いたフードフランチャイズ本部だけを見ると、2016年、2017年共に23.9%と前年と同水準なのである。

つまりフランチャイズ本部以外のフードビジネスの支援事業者の出展が減少しているに過ぎず、フードフランチャイズ本部は毎年40〜50社を維持している。一方出展者全体の数は2013年頃まで150社前後であったのがここ数年は200社前後となっており、フードサービス以外のフランチャイズ本部が積極的な加盟店募集を行なっていることがうかがえる。

ちなみにASEAN各国のフランチャイズ関連イベントでは依然として出展者の50%前後がフードサービスであり、21世紀からの国内フランチャイズ成長率の低下とリーマンショック後のフランチャイズ本部数の減少などを経て、日本は独自の進化をしているといえよう。

来場者の属性

2017年の来場者属性データはまだ未発表のため、2016年開催時と東日本大震災後の2012年開催(2011年開催は震災直前のため)を比較してみると別表3のように大きな変化が見られる。

別表3

当社はフランチャイズ加盟相談を日々受ける立場にあるが、外部環境の変化によってその属性は大きく異なる。
リーマンショック後は、その煽りを受けた異業種の企業が相次いでフランチャイズビジネスに参入した。本業への不安を新規事業で支えるという形である。同時に失業率も急増し、転職活動もままならない状況であった。
そして2011年3月11日、東日本大震災に見舞われ日本があらゆる面で自粛を選択するようになった。下げ止まったかに見えた外食産業はリーマンショックと震災によりさらに底を知ることになる。
震災以降は、これまでフードフランチャイズを中心にしてきた中小企業が、教育や介護など異業種に参入するようになった。また、自分を見つめ直し、早期退職を選択する個人の増加が目立ち始めたのもこの頃である。
近年、低資金且つ一人でも開業できるサービスフランチャイズが台頭し、日本が独自の進化を遂げたのも、外部環境の変化が大きな要因であることを、来場者属性が如実に表している。

2017年の国内フランチャイズ

2011〜2012年頃からスマートフォンの普及率が徐々に高まり、2015年には約50%まで成長、2016年には40代以下でも70%を超え、我々のライフスタイルやワークスタイルの全てが一変した。
新しいサービスが次から次へと生み出され、物事は目覚ましいスピードで移り変わっている。あらゆる情報を、その真偽はともかく無料で手に入れることがたやすくなり、大抵のことは自己完結できるようになった。それは生活だけでなく、自分らしく好きなように働くことができるという仕事の在り方・考え方までもが変化しているのだ。
SNS利用率が高まったことで、消費者や従業員が企業に与える影響力はとてつもなく大きく、大企業でさえも先行き不透明な状況が続いている。有効求人倍率は2016年12月には25年ぶりの高水準を記録し、どの業界を見渡しても慢性的な人手不足であり、末端に主導権がある状態だ。
フランチャイズはそのほとんどが従業員を伴うビジネスであり、加盟によって事業機会を得たとしても「採用」の見通しが立ちにくい。また、日経平均は20年ぶりの高値をマークしており、設備投資等が推進されているため、企業はしばらく本業への投資を優先するか、或いは他の投資案件を探し求めるかもしれない。
フランチャイズ本部による運営代行、黒字化保証制度など、投資案件として割り切ったスキームが増えており、本部と加盟店の在り方は変わりつつある。
一方、脱サラ・個人加盟タイプのビジネスは転職業界の影響を受けやすい。
リスクを伴う起業よりも、目の前に広がる求人の売り手市場に飛び込んだ方が賢明であるからだ。2017年は特にフランチャイズ本部にとって注目の1年になるだろう。

国内フランチャイズの展望

フランチャイズショーと海外のフランチャイズ関連イベントとでは、決定的に海外出展者の数が異なる。
2017年開催では前年を上回ったものの、海外からの出展者はわずか6.5%である。加えてその内訳は海外展示会主催者や団体、コンサルティング会社が占め、フランチャイズブランドとしての海外出展者は皆無に近い。
海外のイベントでは地域によるが20-30%程度が海外出展者であり、自国の政府や関連団体の支援によって国ごとのパビリオンとして出展するケースもある。当社も海外パビリオンの実現に向けて、海外フランチャイズ本部に打診したのだが、渡航と滞在コストが高すぎることや春節をはじめとした時期的な理由で見送られた。
多くの海外フランチャイズ本部は日本のマーケットを魅力的と語る一方で、あらゆるクオリティが高い日本に自国の商品・サービスが受け入れられるかどうか自信が無いという素直な意見も多く聞くことができた。
日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の発表(2015年度)によれば、国内のフランチャイズ本部は1,329であり、JFA会員はそのうち24.5%の325にとどまる。
約25兆円ものマーケットがありながら、シンガポールや香港、フィリピン同様にフランチャイズ法なるものも存在しない日本。
国内法令整備と、マスターフランチャイズ権を例に日本の投資家と海外フランチャイズのマッチング、国内フランチャイズと海外投資家のマッチングなど、次なる一手が必要である。