フランチャイズ10年史とこれからの起業

フランチャイズ10年史とこれからの起業

日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の直近の発表によると、2016年度(2017年3月期)には1,335ものチェーンがあり、26万店・25兆円の規模に成長しているという。(あくまでアンケートベース)

10年前と比較すると、チェーン数はおよそ+90、+3万店・+5兆円と著しい成長を遂げているようだ。

25兆円のうち、およそ10兆円はコンビニエンスストアということだが、直近の数字から単純計算すると、1つのチェーンが200店舗ほど運営しており、1店舗あたり月商800万円ということになるわけだが、2017年10月時点でのセブン・イレブンの国内店舗数が約2万店なので、早くもこの単純計算は無意味であることがわかる。

国内フランチャイズチェーン推移

国内のフランチャイズは1960年代頃より不二家レストランなど外食産業がスタートとされているが、古くは明治時代の特定郵便事業も広義のフランチャイズとされ、そういった意味ではカーディーラーも含まれるため、このビジネスフォーマットの歴史はとても長い。

90年代に入ると、ベンチャー・リンクが外食チェーンを中心に発掘・育成し一時代を築いたが、2012年には事実上の倒産という形で幕を閉じた。
ではこの10年の間では、この業界にどんなことが起こっただろうか。上記のグラフと共に解説しよう。

まず、グラフからフランチャイズチェーン数の推移がV字であることがわかる。ご存知のとおり、リーマンショックである。

当時の記憶を辿ると、チェーン加盟希望者の多くは、リーマンショックの影響を受けた企業による異業種参入(主に外食)やそれらの企業従業員による脱サラであった。本業が完全失速してしまう前に、新しい事業の柱を。という声をよく耳にしたものだ。事業の柱というくらいなので比較的売上規模の高い、そこそこの事業投資が必要なブランドが選ばれていたように思う。

2011年には忘れもしない東日本大震災が日本を襲った。自粛ムードが日本全体を覆い、フードビジネスにおいては外食から中食へ大きな転換を迎え、それまで外食チェーン加盟で成長した中小企業は、ノンフード系の教育や介護に参入、個人に至っては本来の生き方を考える機会となり、脱サラ系サービスチェーンの急成長のきっかけともなった。

被雇用者か自営業、どちらか選択できるとした場合に自営業を選択する人の割合

振り返ると日本のフランチャイズはどうも経済情勢など外部環境の悪化で成長するらしい。

上記の「自営業の選好度」を参照しても、日本人の脱サラ・フランチャイズ起業というのは、アントレプレナーシップというよりも、やむを得ない消去法的なもののようにも思える。

ここ2年ほどの間で登壇した起業セミナーやフランチャイズセミナー参加者の約8割は、「何を」自身のビジネスとするか明確に定まっていないという実態もある。

各国の開業率

奉仕・忠誠・終身雇用、日本人の美徳は「開業率」の推移グラフからも読み取れる。狭い国土に溢れるモノや情報、欲しいものはどこでも手に入るし、ヒラメキは先行されていることの方が多い。起業しないとできないことは、ビジネスではなく、組織や人間関係に縛られない生き方なのかもしれない。